板金で20万ぐらいかな…

 毎日仕事、仕事と、又、売上、売上と言われ続けた僕。日々の煩わしさから逃れるように、一人温泉街への旅に出た。雪が降り積もる深い山中、現代の秘境ともいえるひなびた温泉街へ、マイカーと共に訪れた。
 足湯や、半身浴、薬湯等、各種温泉を楽しんだ僕はきっとリラックスしすぎて気が抜けていたのだろう。山を下る帰り道、右コーナーへ差し掛かったとき、フロントタイヤ、リアタイヤが滑り、あたかもドリフトのようにコーナーを抜けていった。その時の僕は、決して焦る事はなかった。ゲーセンで幾度となくイメージトレーニングを積んだ僕にとって、この程度はハプニングの範疇にも入らなかった。将来、公道最速伝説を築き上げる為の練習だと思えば何てことはない。かの高橋啓介もプロジェクトDが始動する前年度、赤城の峠でスノーロードを走りこんでいたのだから。そう思った僕は、ただ家路に着くのも芸がない、時間がもったいないので、スノーロードの走りこみにでた。
 各コーナーを華麗に走り抜けていく僕。時には対抗してくる車もあったが、軽くチギッてみせた。僕に勝てるものなど、この峠にはいない。この峠の王者は僕だ。この峠最速は、僕のパジェロミニだ。
 走っていること数十分、突然思わぬ出来事が起きた!調度それは、溝落としの練習をしていた時の事である。普通に走っていたのではちょっと厳しいかなと思われる速度でコーナーに突っ込む僕。溝に引っ掛けたはいいが、コーナーからの立ち上がり、タイヤが溝から抜けなくなってしまった!そのまま引っ掛けた左フロントタイヤを軸にスピンする僕。そして、そのまま道路わきの壁へぶち当たってしまった!幸い、単独事故だった為、被害を被ったのは僕だけだったが、車のフロントボディがおしゃかになってしまった。流石に少しだけ焦ったが、こういうことだってある。中里毅だって車をぶつけて板金屋の御世話になったのだから、たいしたことではない。板金屋で20万ぐらい使うことになりそうだが、今乗ってる車を大事に思っているのなら、どうということはない金額だ。車が復活したら、温泉旅がてら、走りこみに出かけよう。
 こうして、僕の公道最速伝説樹立に向けた野望は続いていく…。